脳内プロトタイピングがすごい
皆さんお疲れ様です
高原さと(@ART_takahara)です
皆さん
「エンジニアと人生」というラジオをご存知でしょうか
これは我らが音声メディア、Voicyのとある番組です
堤修一さん(@shu223)というすごいIOSエンジニアの方が、様々なエンジニアをゲストとして招き、エンジニアという生き方について語られる番組です
これがとても面白いので、よく聴いています
最近更新がないのが残念ですが、堤さんはものすごく忙しそうなので贅沢は言えません
その中で個人アプリゲーム開発者の嶋田さん(@toshihiro_app)という方がゲストの回があります↓
「第7回 嶋田式アメリカで当てるメソッド」
嶋田さんはppkpというドット絵のアクションゲームをたった一人で開発し、ヒットさせたすごい人
ppkpをダウンロードして遊んでみましたが、とても一人で作ったとは思えないクオリティでした
嶋田さん独自の手法をこの放送では話してくれています
その中でとても興味深い話がありました
それが「脳内プロトタイピング」です
なんでも嶋田さんは、作るゲームのプロトタイプを、作る前に頭の中で想像し、それを脳内で何度も体験し修正することで、実際に作らずして高速でアイデアを出しているらしい
以下、Voicyからの引用になります↓
嶋田「ペーパープロトタイピングって俺も昔やってたから、メリットはすごくわかってるんですけど
でもデメリットもあって
描くってことは遅いじゃないですか
描いて、切って、貼って、、とかやってたら遅くて
これより速いのなんだろうなあ、って考えて
俺がやってんのは脳みそで全部考えるってのやってるんですけど
(中略)
VRみたいな感じで、今見えてる空間の中に、そのゲームがありありと有るっていう状態を、俺が能力として身に着けることができれば、だれよりも速くモックを作って、それを捨てることができるんですよ
おれも昔、モックを速く作って、どんどん捨てるってのをやってたんですけど
それも遅いなって
作っちゃってるから
そうじゃなくて、他の人ができないレベルで、この空間にモノが見えるっていうところをまず鍛えようと思って
で、毎日やるんですよ、イメージトレーニングを」
堤「この話は思ったより深刻な話になってきた」
うーん何度聴いてもすごい
この回はもう数十回は聴きましたね
この配信の影響で、僕の絵の考え方やモノの作り方はかなり変わったと思います
現実を意識して想像する
僕も絵描きの端くれなので、映像記憶とかイメージとか、そういった類のことはできる範囲で色々考えてきました
実際、下記のような絵の描き方を今まではやろうとしていました
要するに
①描く前に頭に絵をイメージする
②実際に描く
ってことですね
今までの僕はこのやり方から出られませんでした
上記のような絵の描き方は、たまに知り合いの絵描きやCGアーティストにも、やっている人がいます
しかし嶋田さんは、これよりもっと優れたやり方をされているように思いました
しかも、それを具体的に言語化し、しかも単なる絵や映像ではなく、ゲーム開発での手法に応用されている
さらに実際にヒット作を生み出しているわけです
これで興味を持たないのは逆に難しいでしょ
配信の中で、僕が特に面白いと思って参考にしてるやり方は
①は、ゲーム開発をしてる人なら当たり前にやってるのかもしれないけど、自分は今まであんまり意識してなかったです
映像や絵を直接イメージしようとしていた
けど、よく考えたら、絵よりも実際の体験を想像した方が、より鮮明で説得力のある絵が浮かぶよね
しかも実際の「面白さ」、までデザインできる
②は、メモを書いたり作ったりしてしまうことで、アイデアが固まってしまうのを防ぐためらしい
これに関しては疑問があったので、最後の【後日談】で質問してみました
③は配信の中で明確に言ってたわけではないですが、個人的にかなり注目したところです
嶋田さん曰く、「鮮明に想像していると、だんだん日常の中で映像が見えてくる」、らしいです
個人的に③は意識的にやることで、より大きな効果が得られると思い、最近実践しています
頭に想像するだけじゃなく、現実に投影してイメージすることで、実際に作るときに手数を減らすことが出来ます
要するに、速く作れます
僕は今まで、資料を見たり、目をつぶったりして映像を想像したら、すぐに作り始めていました
これでもゴールは明確なので、まあまあ速いんです
ただ、これだけだと実際に描いたり作ったりしてるときに、想像と違うものができたり、それの修正に時間を使うことが多く、時間がかかってました
が
最近は、想像してから実際に作る前に、頭の中のイメージを、現実(見えてる空間、紙の上やPCの画面とか)に投影してみるようにしました
このプロセスをはさむと、描いたり、作るときの手間をめちゃくちゃ減らせます
最初から目を開けたまま、目の前の空間に映像をイメージすればいいんじゃん
と思うかもしれませんが、目を閉じてイメージした方が、時間や動き音など、曖昧な情報を多く扱えるので、たくさんのイメージが出せます
まとめると
①目をつぶって脳内にイメージ
②目を開けて、目の前にイメージを投影
③実際に作る
今のところ、この手順が一番良さそうなので、しばらくこのやり方を試しているところです
訓練すればイメージを現実に見ることができる、気がする
ただこのやり方、理屈としては単純だけど、
映像を現実にイメージって、そんなの、できるわけないだろ
と思う人が多そうです
色々考えましたが、これは訓練すればどうにかなると思います
人間は多かれ少なかれ、
「これからやることを想像する」
ってことを日常的にやっています
例えば、目の前にあるコップを掴むとき
ほとんどの人が、意識せずに一発でつかめると思います
コップの位置、向きは、毎回違うはずなのに、持ちそこなったりすることがありません
よく考えるとこれはすごいことです
つまり、人間は何か動作をする前に、目の前の映像に合わせて、これから体がどういう風に動いて、何をするか、具体的にイメージしてるわけです
でなければ体を自由に動かして生活することはできません
こういった日常的にやっているイメージをより鮮明にしていった先に、嶋田さんの脳内プロトタイピングがあるのではないかなーと思っています
頭の中や現実に映像を移すことが出来るのは、絵描きやクリエーターだけではない気がします
例えば、思い出したのはそろばん
配信でも「暗算がすごい」という話が出てきています
そろばんの暗算が達者な人は、そろばんを目の前、もしくは脳内にイメージできるため、そろばんがなくても、イメージの中のそろばんを使って瞬時に計算ができるそうです
僕の高校時代の東大に行った先輩も、何もない場所でそろばんを弾く動きをしながら、計算をしてました
あと(ホンマでっかTVによれば)、人間は訓練を積めば、体の全ての筋肉を独立して動かせるようになるそうです
たぶんプロ野球選手のピッチャーなどは、体のどの筋肉をどういう風に動かしてボールをなげるか
そして投げた玉が、どういう軌道を描いて飛んでいくかをイメージしてるんじゃないかな
他のアスリートの方にも、たぶん似たようなことをしている人は多いんじゃないかなーと、今回の話から想像しました
同じことをモノづくりでやればいいわけです
ただ、絵やCGなんかは、体を動かす部分が少ないので、その分イメージはしにくい気がしました
【後日談】嶋田さんに質問してみた
配信を聞いて気になったことがあったので、後日、嶋田さんにTwitterのDMで質問してみたことがあります
質問は、
ということです
頭の中での想像やシミュレーションは無限にできます
そうすると、「これでいこう」というゴーサインが出しにくいなーという気がしてました
僕の今までのやり方だと、
「もう時間が無くなったとき」
や
「何となく行けそうなとき」
に作り始めることが多かったです
そのあたりは嶋田さんがどうしてるのかを聞いてみました
質問の答えは
だそうです
素敵すぎる…!
もちろん実際には作り始めてからイメージを修正することもあるそうです
ただ、面白くてワクワクするから、制作をスタートする、というのはとても良さそう
僕の場合、時間がなくて、何となくのイメージでスタートしてしまうことも多いですが、妥協せずにアイデアを練る時間は、やはり大切だなと実感しました
あと、どこの馬の骨かもわからん僕の突然のDMに、丁寧に答えてくれるやさしさにも感動しました
ありがとうございます
嶋田さんの次回作が楽しみです
ppkpもぜひ一度プレイしてみてください
ではまた