前からやりたかった美術設定の仕事したよ
皆さんお疲れ様です
高原さと(ART_Takahara)です
僕は普段は映像やゲームのコンセプトアートと呼ばれるイメージ画を描く仕事をしてるんですが、今回はちょっと違うお話です
先月、前からやってみたかったアニメの美術設定お仕事をいただく機会がありました
その仕事がちょうど先日終わったので、今日はその感想とか、難しかったことや気がついたことなどをまとめたいと思います
描いた絵はこんな感じです!!
じゃん!!!↓
おおっーこれが…!!…
って・・これ、お前の実家の書斎(2年前)じゃねーか!
はい、まあこんな感じの、線画で描かれた背景の設定ってことですよ…
仕事で描いたやつは載せられないのでね
趣味で描いたやつでご勘弁
これは大分古い絵なので、今回仕事で描いたやつはもうちょっとマシですよ
美術設定っていうのは、何かって?
どこから説明すればいいかな
アニメは絵を動かして作る映像です
その絵の中で、背景を書く人、キャラクターを書く人、コンテを描く人、とか色々分担があります
そん中で美術設定では、背景の設定を決めるわけです
なんだ、背景の設定かー
いやいや、ただ上手い絵を描くだけじゃいけないのです
まず大事なのが、絵コンテに描かれた演出をするのに必要な空間を用意しなきゃいけません
キャラクターが部屋で喧嘩するシーンがあったとしたら、その部屋の空間の広さか決めたりとか、実際どんな感じの部屋なのかっていうのを決める
キャラクターが走るのなら、走れるくらいの空間を用意しないといけません
そうやって演出に必要な空間をきちんと用意しつつ、背景の世界観などの見た目の部分も考えていく工程ですね
めっちゃ大事やん!
というのが僕の美術設定に対する認識です
間違ってたらごめんね
はいという美術設定の仕事をやりました
実際やった仕事の細かい情報は明かせない内容が多いんですが、仕事を通して思ったことを書きたいと思います
美術設定についてまとめられた情報は少ないので、このブログ貴重が何かの参考になれば嬉しいです
やってみた感想①「白黒だから画面の雰囲気をつかみにくい」
アニメの設定は白黒の線画で書かれることが多いです
美術設定も同じ
例えばこの方
塩澤良憲(シオザワヨシノリ)さん
「ソードアートオンライン」や「凪のあすから」などで美術設定をされていた方です
プロ中のプロです
上手すぎるわ…
とまあ上手い方の設定を参考にしながら、僕も今回は鉛筆で書きました
普段やってるコンセプトアートの仕事ではPhotoshopやタブレットなどのデジタル画材で描くことが多かったです
まあカラーで書くってことが多いんですよね
それが今回は白黒の線画で描いたので、空間はともかく、画面の雰囲気っていうのは非常に掴みにくかったです
アニメも最終的にはカラーになるわけです
なのでカラーになることを想定しながら、白黒で設定を描くわけです
これがなかなか難しかった
そこでちょっと苦戦したというのはありましたね
初めて行ったっていうのもあるんですけど
後は白黒だから、もののシルエットとか色の変化みたいなところでのメリハリ感みたいなものもつけられないので、よりシンプルにも見せて行かなくちゃいけない
その中でその映像としての世界観を説明しつつそう、美術としての魅力も出るように設定を考えなきゃいけないっていうところが難しかったですね
やっぱり線画に関しても、もっともっと訓練しないといけないなということを思いました
正直今回は初めてだったので、描くだけで精一杯になっちゃった感はありましたね
とにかく映像として完成しないものを設定として書くわけにはいきませんから
必要な演出がしっかりできる空間を用意するってこととか、配置関係の整合性をとるっていうことだけ精一杯になってしまったかも
そのあとのアニメの原画マンのレイアウト作業のしやすさや、美術さんが本番の背景を描いたときに綺麗になるかどうか、実際映像にした時のクオリティ…
とかとかって言う、設定を描いた先のとこまで余り深く考えられなかったのが、今回の反省点としてありますね
監督は喜んでましたが、果たして本心なのか…
やってみた感想②「指示少な!!」
もう一つの感想としてあるのは、指示が少ないですね
アニメ業界の仕事全般に言えることだと思いますけど
僕が他の仕事でやった背景美術の仕事とかでも指示がすごく少ないことが多いですね
そして資料も少ない
説明も余りないし、尋ねても決まってなかったり
ただ、今回はこれまでやったアニメの仕事よりは説明や資料がしっかりしてました
事前に曖昧な部分を減らすように質問やイメージをすり合わせをしておいてよかったです
メインスタッフの座組も決まってない部分があり、普段やってる仕事と比べて、チェックの流れにも不安なところはありました
細かく指示がなくコンテだけ見せられて、ちょろっと写真資料はあって、みたいな感じ
後はいい感じにお願いします!!!
みたいな感じで進むことが多いです
他の仕事では、コンテもなかったり、ひどいときは脚本もないときもありました
何がしたいねん!
そういうときは、むしろこちらから色々提案するべき時です
提案するところと指示通りやるところの塩梅が難しいです
本当にメール一本だけきて、それで仕事始めるとかとか
そういうのもあったりとかするんで
なんだろ
しっかりとした座組でやってるゲーム開発とか映画の人たちがアニメの仕事を見ると、かなり進行や座組がずさんなんじゃないかと思う人もいるかもしれないですね
今回も改めて、指示は少ないなと思いました
あと修正の指示も少なかったです
アニメ業界の中では修正をするっていうことも上の立場の人の仕事になってます
背景だったら美術監督の人とか、原画なら作画監督の人とか
修正をする立場の人がきちんと立てられているので、実際の作業者にあまり修正が何回も戻ってこないっていうことも結構あるみたいですね
それはまあ作業者としては楽だからいい良いとも言えるし、自分自身でクオリティを追求することができないっていうところもあるんで、良し悪しはあると思います
そうですね
僕の観測範囲だと、かなり統率を取るのが難しそうです
予算とスケジュールがなく、人も少ない中で全体のそのバランスをとると言うか、スタッフの中にきちんと指示を行き渡らせ、スケジュール通り進めるってところが、なかなかできてないのかなというような感じがしました
この話は、美術設定に関係なかったですね
やってみた感想③「手書きの仕事も楽しい」
手書きの仕事が楽しい
今回は、最終的な絵はスキャンしたデータで納品したんですけど、そこまではすべて手描きでした
僕の仕事の中では始めて最初から最後まで、ほぼ手書きでやった仕事になりましたね
これまでやってきた映像とかゲームのコンセプトアートだと、ほとんどデジタルで書くことが多かったです
イラストの仕事とかも今ほとんどデジタルで書くことが多いと思うんですが、アニメ業界の仕事はまだ手書きの文化みたいのが残っているようです
設定に関してはデジタル納品でもいいっぽいですが、実際の作業者が手描きなのに、設定だけデジタルだと不具合が出そうだったので僕も今回は手描きにしてみました
手描きは効率が悪いなと思うところもありつつ、でもメリットもすごく多いなと思いました
単純にすごく楽しいし
デジタルって無限に修正ができてしまったりとか、無駄に時間がかかったりとか、細かく書くべきじゃないところも細かく書いてしまったりとか
っていう問題がどのメディアにおいても起きると思うです
アナログで書いておくとあまり細かいところをかけなくなったりとか、いい意味でこだわりすぎないというところがあるかなと思ってて、うまくアナログ作業をデジタルの間に挟むと、同じとこでつっかかると言うか、迷走してしまって前に進めなくなるっていう状況を避けることができるかもしれないと思いました
全部デジタルの媒体で作っていると、制作途中で穴にはまると言うか、堂々巡りしてしまって全然先に進まないということがあり得ます
紙に書くとそういうこともちょっと減らせるのかなと思いました
聞くところによると、エンジニアの人とかでもそういうのがあるらしいですね
やっぱりエンジニアって100%デジタルでやる仕事だから、プログラミングで同じ所でずっと詰まるみたいな同じエラーでずっと詰まるみたいなところがあるみたいで
そういうのも、もしかしたらアナログ作業で紙に書いてみたりすると解決するってこともあるのかなと思いました
手書きの仕事っていうのもこれからできるできるのであればやっていきたいなというかんじです
設定を考えるのはやっぱ楽しいね
設定考えるのってやっぱ楽しいですね
コンセプトアートも設定の一部なんだと思うんですけど、なんか世界観を考えたりとか、どういう空間でキャラクターが動くのかとか
キャラクターデザインの設定の一つだと思うんだけど
そういう設定を考えるのって楽しいなという風に改めて思いました
これからもコンセプトアートとか美術設定とか含めていろんな、設定の仕事とかできたらいいなという風に思ってます
こそっとお金の話
ちょっとだけお金の話すると、今回頂いたりしてお仕事は1枚12000円でした
それが10枚弱あったような感じですね
この1枚12000円程度は下記の他の絵描きの人なら引き受けない可能性がある、まあまあ安い金額だと思いますね
僕は今回お金が欲しくて今回の美術設定の仕事を引き受けたわけじゃないからいいですが
なんならその1円でも多分引き受けたと思うんですよね
なのでお金がほしいってわけじゃないんですけど
ただ人手不足になるのも頷けますね
アニメの仕事全般に言えると思うけど、お金はたくさんはもらえないというのは基本になっていると思います
ただこれもプロジェクトの予算とか、テレビなのか映画なのか、また別の媒体なのかとか 、CM なのかとかで予算が全然変わってくると思うんで、アニメの仕事の中でもきっと単価の良し悪しってのは多分歴然とあると思います
あと個人的に、「1枚いくら」のこの発注の仕方を僕はあまり良いやり方じゃないなと思います
値段に関してではなく、一枚いくらで発注してしまうと枚数に不足が生じたときに、追加で発注するっていうのにいいちいちお金を払わないといけない
コンセプトアートや設定を考えるっていうわりと柔軟性が必要な場所において、一枚いくらで発注してしまってのはあんまりよくないなと思ってます
なので僕は普段の場合だと1ヶ月単位でお金をもらうようにしてます
期間に対してお金をもらう感じですね
その間は可能な限り何枚でも描きますよ、というやりかたです
そういう風にした方が、ラフな絵を何枚も書くことができたりとかm状況に応じて適切に対応できるんで、一枚いくらで発注よりいいと思ってます
作業者としてもその方が嬉しいはず
発注者としてもどんな絵が必要かを考えながら1枚1枚バラで発注するよりも、丸投げして一緒に作った方が結果的にコストが安くなるかと
描く時に参考にした資料
今回だけじゃないですが、アニメの仕事をするときに参考にしている資料です
美術、特に美術設定に関しては本が少ないですよね
前半で紹介した塩澤良憲が美術設定の作画のメイキング動画を公開しています
あとは背景グラフィッカーの吉田誠治さんの動画も参考になります
この方はペイントのやり方も効率化していて、少ない手数で絵を描くときの参考にもなります
そのほか、下記の本はとても参考になると思います
レイアウトも良く参考にしてます
劇場版の鉄コン筋クリート設定資料です
上手いし魅力的だし物量もすごい!
しかもほとんどの設定を美術監督の木村真二さんお一人で描かれたようです
すごすぎ
男鹿和雄さんの画集です
絵に関しては説明不要ですよね
見てると和みます
美術設定も結構載ってたりします
設定がどういう風に実際の美術になってるかがわかりやすい
江口寿史背景原図集
設定ではなく、背景のレイアウトの集です
何を描けばよいのか、とっても参考になります
背景原図の描き方も載ってます
買ってよかった
スタジオジブリレイアウト展図録
上手すぎ
美術設定の仕事をするには
これからもし美術設定の仕事をやりたい人がいたらどうすればいいのかなーとちょっと考えてみました
なんだろうな
アニメ業界とか映像の業界って結構閉じた業界です
仕事をやったことない人や知らない人にいきなり仕事頼んだいとかはあまりしないんですよね
知り合いの知り合いから仕事が来たとか、そういう人とのつながりで仕事が来ることが多いです
あとあまり未経験の人に仕事を振るって事は結構珍しいと思っています
今回僕に仕事が来たのも一応アニメの背景とかコンセプトアートとかの仕事をやったことがあるから仕事が来たって言うのであって、もし全く行ったことがなかったとしたら、これで僕に仕事が来たかどうかはちょっと微妙だと思います
そういう意味で映像とかの仕事って、バイトとか新卒の就活とかみたいに、
この職種募集してます
みたいな感じで募集してるようなタイプのものじゃないから、なかなの仕事を得るってところ難しいように感じるかもですね
ただその代わり、常に人手が足りていない状態なので、最低限の画力まで頑張って訓練して行って、そっからはそのアニメの仕事をしている人と今 Twitter で知り合ったりとか、セミナーに参加したりとかして知り合っていくのが良いと思ってます
アニメ私塾っていうオンラインサロンみたいなとこに入ったりとかしても良いかもですね
いろんなアニメ業界の人と知り合うことができます
そこで自分が今までやってきた仕事とか、自分が書いてきた絵を見せて
アニメの仕事したいんですよね
って言えば仕事をもらえる可能性は十分あると思います
僕は実際セミナーで会った人に、作品を見せて、そこから仕事をもらったことがあります
そうやって、何とか地力で能力を上げつつ業界の中に飛び込んでいくのがよいのではと思います
門が空いたら飛び込むってんじゃなくて、門が空いてないところに自分から飛び込む感じです
自分から人に会いに行ったりとか、自分から作品を見せたりとかしていくってことをすれば、仕事自体はもらえるんじゃないかなというふうに思いました
あと美術設定に関しては、本番の背景を描いたことがないと難しいかもですね
そういう意味で、まずは背景の仕事から始めるのがいいのかもです
もしこれからアニメの背景関連のお仕事がしたい人がいたら参考にしてみてください
ではでは~
高原さと